生命哲学序論 本編 第十章

10-1
 量子力学の創始者、シュレディンガーの有名な著書『生命とは何か』の中で、この偉大な碩学は、次のように述べている。
 「生物体の最も肝要な部分にある原子の配列や、その間の相互作用は、物理学者や科学者が従来実験的・理論的研究の対象としてきたあらゆる原子配列とは根本的に異なったものです。(中略)まったく異なっているというのは、統計的な観点に関してのことだからです。」(『生命とは何か』、シュレディンガー著、岡小天・鎮目恭夫訳、岩波文庫、2009年)
 これは1944年に発表されたものである。我々は分子レベルでは、生命体も物体も同じだと思いがちであるが、既にそのような認識は科学者の発見によって、塗り替えられているわけである。この統計的なこととは、どういうことかは、『生命とは何か』を直接お読みになるのがよろしい。筆者が指摘したいことは、今日の学校教育で教えられる、古典的な物理学や生物学だけでは、生命体を物質レベルで理解することは出来ないということに止まる。
10-2
 量子力学の成果によると、物体は確率的な存在ということになる。それはつまり90パーセントの確率で存在する物体は、10パーセントの確率で存在しないということだ。そのことは物体の一種である肉体にもあてはまる。我々の肉体は、堅固な実在ではなくて、揺らいでいるのであった。この揺らぎのことを、複雑系という概念で把握しようとする試みは既に為されていて、ファジーコンピューターなどに、応用されているわけである。これはどういう解釈を許すであろうか? 
10-3
 アーサー・ケストラーの、ホロンという概念は、全体と部分というものを統合する際に、有効な考えである。しかし私はホロン相互の連関が、層を成して場を形成するのではないかと考えている。それを説明するために、北海道でよく見られる、野原の発達について考えてみたい。
10-4
 最初、何も無かった野原に、ぼつぼつと植物が生えてくる。すると、その植物の活動は、次に生える植物の生育に当然関与するわけだ。やがて、そこに虫等の動物が棲むようになる。その動物は植物を食べたりする。すると野原の植生に影響する。このように段階を踏んで野原は発達していき、前の環境を基にして、次の環境が現出し、当然植生や動物の生態に影響する。更に日光、空気の窒素濃度、といった、外部環境も関与していく。このように事態は段々と複雑になっていくが、最終的には調和的な生態系が形成されるのである。
10-5
 生物は他の生物と関わって生きていて、しかもそれ自身が環境を作り上げているのである。その連関が生命圏全体ということになる。しかもその出現は確率的である。ということは、絶対未来はそうなると、現象に関しては断言できないので、より確からしいとしかいえない。従って、生命体としての人間は、常に揺らいでいて、実体的な存在ではないということである。連関の中の存在、つまり世界内存在なのである。




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